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慶應義塾大学理工学部生命情報学科

研究方針とプロジェクトpolicy and project

研究方針


 生物は様々な優れた機能を有しており、それらの謎を紐解くことにより生命現象の本質に迫ることができます。生物機能は、環境調和型物質生産、医薬農薬の開発や複合微生物系を利用した作物の栽培など、様々な応用が考えられます。我々のグループでは、次世代シークエンサー等の最新鋭の機器を駆使して、生物機能の解明と工業利用を目指します。

主な研究テーマ(Research Description)

1)新規酵素の探索(Identification of new biocatalysts by screening)
自然界に存在する微生物のうち、培養可能な微生物は1%以下と言われており、従来これら可培養微生物が酵素のスクリーニング源として用いられてきました。しかし、新規な性質を有する酵素を探し出すことは困難となっており、従来研究対象とされてこなかった難培養微生物に注目が集まっています。そこで我々は、難培養微生物の遺伝子ではなく酵素を直接解析する新たな手法を開発しています。

新酵素のスクリーニングは必ず推進していかなければならない重要な研究課題であると考えています。この様な信念のもと、従来の泥臭いスクリーニングから、最近慶應義塾大学理工学部に導入した次世代シークエンサー(Illumina社製 Genome Analyzer IIx)を用いた大規模配列解析による酵素遺伝子探索まで、様々な新酵素のスクリーニングを精力的に実施しています。

2)酵素の機能改変(Creation of tailor-made enzymes using directed evolution and rational design)
自然界から得られる酵素を工業利用する場合、性質が不十分な場合があります。その様な時は、Directed evolutionにより酵素機能を改変することが必要となります。我々は、世界に先駆けて見いだしたアリールマロン酸脱炭酸酵素等のオリジナル性の高い酵素を用いて、従来最も困難とされてきた立体選択性の逆転、全く異なる酵素への進化や酵素活性の向上を行っています。そして、脱炭酸酵素を非天然化合物に作用する人工的なラセマーゼへ改変や、脱炭酸酵素の酵素活性を劇的に向上に成功しています。将来的には、Rational Designにより酵素機能を自由にデザインし操りたいと思っています。



3)PET分解酵素の機能改変(Improvement of catalytic performance of PET-degrading enzymes)
京都工芸繊維大学の小田名誉教授は、世界で最初のPET分解細菌Ideonella sakaisensisを発見した。そして我々のグループでは、次世代シークエンサーを用いてゲノム解析やトランスクリプトーム解析を行い、PET分解酵素(PETaseとMHETase)を見いだすことに成功した。この酵素は、PETのバイオリサイクルに応用可能な新規性の高い酵素として世界中から注目を集めている。しかし、実用化のためには安定性や活性の向上が必要であり、現在を行っている。


4)生物活性物質や生合成系遺伝子の探索(Identification of bioactive compounds and novel biosynthetic genes)
自然界からは、様々な生物活性を有するユニークな構造を有する化合物が見いだされている。特に、クロイソカイメン等の海洋生物からは新奇な構造を持つ天然物が複数単離・構造決定されています。クロイソカイメンには大量の微生物が共生しており、それらが有用物質を生合成していると考えられてます。そこで、共生微生物から抽出したメタゲノムを解析し、新規生合成系遺伝子の探索を行っています。また、ユニークなアッセイ系を用いて、ハーブ、漢方や海洋生物から脂肪蓄積阻害等の生物活性や共生に関与する化合物のスクリーニングと単離・構造決定を行っています。

研究プロジェクト

戦略的創造研究推進事業CREST

「ゲノムスケールのDNA設計・合成による細胞制御技術の創出」

 

JST「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」

「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』」





共同研究(企業)

1)指定寄附研究 日本たばこ産業株式会社
2)指定寄附研究 株式会社ユーエムエー
3)Enzymical AG (Germany)
4)指定寄付研究 株式会社カネカ

共同研究(大学等)

1)富山県立大学工学部 加藤研究室
2)独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 篠原グループ
3)京都大学農学部 小川研究室
4)Buchum University Dr. Robert Kourist Gr.
5)京都大学工学部 跡見研究室
6)東京大学農学部 尾仲研究室
7)理化学研究所バイオマス工学研究プログラム

8)TUM Prof. Volker Sieber

主な就職先

慶應義塾大学大学院博士課程、ドイツの大学の博士課程

花王、新日本石油、共栄社化学、サントリー、ファンケル、大日本印刷
、旭化成、久光製薬、帝人ファーマ、中外製薬、ゼリヤ新薬、明治HD、カルビー、ブリジストン、クミアイ化学工業、サントリー、日清食品、栗田工業

日本IBM、新日鐵ソリューションズ、DeNA、ウシオ電機NEC、東芝

三井住友銀行、中国銀行、三菱UFJ信託銀行、東京海上

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